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一亩田:中国産有機野菜の夢を現実に(その1)




 おばさんたちは青々とした大根を片手に持ち、もう片方の手で大根の葉を切り落とした。しかし長い根っこはそのままだ。ついている泥も布で簡単にぬぐっただけ。

 「お客様には野菜の本当の姿を見てもらいたい。そして安心してもらいたいのです」。

 農場の管理人はそう言った。

 隣の棚には密封した野菜のパックが並べられている。数時間後にはトラックに載せられ祟明島から上海市内の会員に届けられるのだ。

 中国では、この会社のように有機野菜の生産から配送まで行うというのはまだ珍しい。上海交通大学で EMBA を修めた若者が立ち上げたこの会社の名前は「 一亩田」。 かつて、 創業者の一人 が農家で食事をした際、農家の子供たちが「ボクは庭の野菜を食べる」と言っているのを聞き、「畑で出来た野菜と庭で出来た野菜とどう違うんだろう?」と不思議に思った。実は農民たちは、畑に植えた野菜は市場で販売し、自分たちは庭で育てた農薬を使っていない野菜を食べていたのだ。これがきっかけで、もっと多くの人に健康的で安全な野菜を食べてもらいたいと思うようになった。これが「一亩田」創業の由来である。

 「一亩田」の経営陣はかつて GE やシーメンス、アルカテル・ルーセント、サンド、 RT マートといった世界的大企業で働いていた経験を持つ。互いの理想と創業への意欲が一致し、外資でのめぐまれた地位を捨てて集まった者たちだ。

 「一亩田」という名前は、台湾の著名な女流作家三毛が作詞した「夢田」からきている。「 誰の心にも「一亩田」がある。誰の心にも夢がある… 」、「一亩田」の従業員の一人は、健康なライフスタイルを作り出すことが夢であり、今まさにその夢が現実になろうとしている、と語った。


1 産地

 上海浦東を出て、新しくできた 25 キロの長江遂橋を渡り、約 1 時間半で祟明島にある「 一亩田」の 農場に到着する。

 「長江の海水逆流で、祟明島のアルカリ性土壌ができたのです。ここで農業をする場合、作物が育たないこともあるが、育てばとても味のいいものが出来上がるのです。」

 一亩田 農場の高総経理はこのように説明してくれた。

 島の水は大変きれいで、にごっているように見えても水質は清潔で無毒。魚が住み着いているのが何よりの証拠だ。 一亩田の 創業者たちは当初、生産基地となる農地を探して上海周辺の地域を2ヶ月かけて周ったが、最終的にこの地を選んだ。

 「 崇明 は上海では唯一の『県』です。中国の行政区の定義では、区は工業主体、県は農業主体です。 崇明 島は上海ないし華東で最後の工業ゼロ、汚染ゼロの土地なのです。」

 高総経理は 崇明島 の、この生産基地に大変満足していた。


2作物

 この農場では 2009 年 4 月から野菜を植え始めて、今では 100 を越える品種を育てている。そのうち 70 %が一般的に流通している野菜で、 20 %が 紫叶生菜 (全体が紫色のレタス)や 宝塔菜( ロマネスコカリフラワーに似た野菜 ) などの新種である。

 野菜以外にニワトリと羊も飼っている。

 ニワトリは 崇明島 原産で、若木が生い茂る広大な空き地で、自由に飲んだり食べたり散歩をしたり遊んだりしている。取材で訪れたのは午後 3 時くらいだったが、ニワトリたちは東側に据えられた鶏小屋の付近で休んだり歩き回ったりしていた。鶏の世話係のおばさんは「日なたぼっこしているんだよ」と教えてくれたが、とても気持ちよさそうだった。ここのニワトリのえさはとうもろこしで出来た飼料と農場で採れた野菜ということだった。

 白山羊は 崇明島の 特産。 崇明島 特有の気候風土で育つ優良品種で、肉質がやわらかく、ジューシーで高たんぱく、低脂肪、低コレステロール。現在 一亩田 では 80 頭の白山羊を育てている(ついでながら、日本の奈良県などの高級毛筆は 崇明島の山羊の毛を 原料にしている。

 現在農場には 80 人ほどの農夫がおり、 崇明島の 市民以外にも山東人や安徽人が働いている。


3 特色→有機

 高総経理によれば、中国市場には大きく分けて四種類の野菜があるということだ。

 まず通常規格の野菜。「低毒低残留」という基準をクリアし、一般的に出回っているのがこれにあたる。

 そして無公害野菜、つまり有害物質の汚染にさらされていない野菜。

 緑色野菜は、「緑色食品」の基準を満たした、汚染がなく安全で良質な野菜を言う。緑色野菜はまた A 級と AA 級に分けられる。

 それから最高級の野菜が有機野菜で、生産や加工の過程では絶対に農薬・化学肥料・除草剤・合成着色料・ホルモン剤などの化学物質を使用してはならない。野菜が自然に育つ上でのルールを守り、環境を保護する。これは野菜の生産者が追い求めてやまない、また人々が心から望む最高の目標だ。

 「有機野菜の大原則は、農薬を絶対に使用しないということです」と高総経理。

 害虫から野菜を守るために 一亩田 では 5 つの新兵器を使っている。(1)防虫ネット。虫がビニールハウス内に入り込むのを防ぐ。(2)殺虫灯。紫と黄色の光で虫を引き寄せ殺虫する。(3)性フェロモン剤。害虫が異性のにおいにひきつけられることを利用し、人工合成したフェロモン剤にひきつけられてきたオスを捕らえる。(4)唐辛子エキス。唐辛子などの植物から取り出した刺激成分で害虫を防除する。(5)間作(かんさく)。一つの畑に二種類の野菜を植え、片方を犠牲にするが、もう片方の野菜を守れる。

 「もし草が生えてきても、決して除草剤は使わず草取りをします。」農場の管理人はこう話す。

 見学した際、いくつかの大型ビニールハウスでちょうど肥料をまいていた。このにおいは豚糞だろう。日光がビニールハウスの透明な屋根から土に降り注ぐ。農夫たちは台車を押して、肥料を土の上にかけていく。とても秩序がある。別の場所では、四角くくりぬかれたくぼ地に積み上げられたわらを見つけた。しばらくおけば有機肥料になる、伝統的な堆肥の作り方だ。 一亩田 のルールの第一は「肥料には有機肥料を使う」というもの。

 畑の片側はたっぷりと水を蓄えた用水路で、水源は長江だ。灌漑畑の水はこの水路の新鮮な水を使っている。


 










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