TOP連載記事中医沙龍〜中医薬大学の教室より(95)

SARSを未然に防ぐために その2


〜中国衛生部が発表したインフルエンザ予防に関する情報〜

 SARSの流行を防ぐためにも、インフルエンザの流行阻止に関して、中国政府が注意を注いでいることは、前回にもこの欄で書いたばかりだ。今回はそのなかで、最近、中国衛生部が発表した『中国流行性感冒ワクチン予防接種に関する指導意見(試行)』について、その概要を紹介する。以下の情報は主に各省、自治区、直轄市の衛生局、中国疾病予防コントロールセンター向けの情報だが、すでに広く公表されており、これから中国に仕事などで来られる方も、いま中国で生活なさっている方も参考にしていただきたい。


1、 インフルエンザの流行とSARSに関して

 インフルエンザは中国語では「流行性感冒」「流感」と表記し、インフルエンザウイルスが引き起こす急性の呼吸器系の伝染病だ。この症状が、発熱や頭痛、筋肉の痛み、だるさ、咳嗽、喉の痛み、嘔吐、下痢など早期においてSARSと症状が非常に良く似ているため、その診断が難しい。またインフルエンザが肺炎などの合併症を引き起こし、死亡する症例も少なくない。中国大陸でも毎年どこかで流行しているため、北方では冬場に、南方では1年中症例が見られるが、とくに夏場と冬場に患者数が増える。そこで中国政府衛生部はインフルエンザ予防接種に関する情報を提供し、インフルエンザ患者の数を減らすことを目的にしている。


2、 インフルエンザワクチン予防接種に関する原則とその目的

 ワクチン予防接種に関しては、まず市民自らの意思で決めることを原則とし、そのためには衛生部などの各公的機関が積極的に予防接種に関する知識を市民に宣伝しなくてはならない。また安全と有効性を第一にし、ワクチンなどの品質生産管理や予防接種に関する規定に基づいて実施しなくてはならない。
 インフルエンザの感染者を減らし、また老人、幼児、慢性疾患の患者など、インフルエンザにかかりやすい人々にインフルエンザが流行するのを防ぎ、合併症の発生や死亡率を抑えることを目的としている。


3、 中国で使われるワクチンの種類に関して

 現在、中国で使われているインフルエンザワクチンは大きく分けて3種類あり、それぞれタイプは違うものの、どれもAソ連型、A香港型、B型の3種類に対応する混合ワクチンだ。よくインフルエンザワクチンは1種類のインフルエンザで作成されたワクチンと誤解される方が多いが、実際には日本も含めてそうではない。ともに3種類のインフルエンザに対応することが出来る。ただ毎年、突然変異が発生し、そのためにワクチンの効果が下がってしまう。

4、 予防接種をうける対象

 今回の『中国流行性感冒ワクチン予防接種に関する指導意見(試行)』には、インフルエンザ予防接種を強く勧める人たちと、接種したほうが良いとされる人たちについて詳しい記載がある。

4−1接種することを強く薦める対象
@ 60歳以上の人
A 慢性疾患を持っている人、体が弱く病気が多い人
B 医療関係者、特に医療の第一線で働く人
C 小学生、幼稚園児など
4−2接種することを薦める対象
@ 老人ホームや託児所などに勤務する人々
A サービス業、とくにタクシーの運転手、航空会社、鉄道、バスなどの交通機関に関係する職業、商業やガイドなど旅行会社関係。
B よく国内外の出張に出かける人
中国各地衛生行政部門は事情に合わせて、対象者をさらに検討することとしている。


5、 インフルエンザの予防接種をなるべく避けるべき人

 妊娠3ヶ月以上の妊婦

6、 インフルエンザの予防接種を絶対避けるべき人

@ 卵アレルギーもしくはいままでの予防接種でアレルギー反応があったもの。インフルエンザのワクチンは、孵化鶏卵である鶏の卵に小さな穴を開けて作るため、卵アレルギーがある人は受けられない場合がある。
A ギラン・バレー症候群(GuillainBarresyndrome,GBS)の患者
B 妊娠3ヶ月以内の妊婦
C 急性の発熱性疾患の患者
D 慢性病の発作期にあたる患者
E ひどいアレルギー体質の人
F 12歳以下の児童はKilled virus vaccines(中国語で滅活病毒疫苗)タイプのワクチンは使用できない
G 医師が接種できないと認定した人

7、 いつ接種するか?

 予防接種を接種後に体内での抗体は時間とともに減ってくるため、毎年その年のワクチンを接種する必要がある。また流行するピークの1−2ヶ月前よりワクチンを接種することによりさらに効果が高まる。そこで『中国流行性感冒ワクチン予防接種に関する指導意見(試行)』では9月から11月の間に接種することを薦めている。もちろん中国各地により違いがあるため、注意が必要で、今後最も予防接種に相応しい時期に関して、各地の行政機関から発表があることになっている。


8、 接種後の反応について

 予防接種後にインフルエンザにはかからなくても、普通の風邪にはかかることはよくある。
局部反応:注射した部位が赤く腫れたり、痛んだりする。
全身反応:微熱が発生することがあるが、ワクチンの効果には影響しない。また卵アレルギーのある人は、アレルギー反応を起こす場合がある。

 その他、集団で予防接種を受ける場合は、省クラスの衛生行政部門の批准のもとで、県クラス以上の衛生行政部門が組織を組んで実施しなくてはならない。

 中国政府は今年の冬にSARSの流行が起こらないように、さまざまな政策を出してきている。国土が広いだけに、その政策は多種多様にわたることが予想される。今のところ日本では大きな話題にはなっていないものの、更なる情報の変化に注意していきたいところだ。


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