TOP連載記事中医沙龍〜中医薬大学の教室より(36)

上海の針灸治療
さまざまな鍼灸治療法


 この時期、大学の学部生の就職活動はそろそろ一段落つきます。7月までの卒業まで秒読み段階になると同時に、卒業試験や実技試験、卒業論文の審査などあわただしく時間は過ぎていきます。医学部の就職難、とくに中医学系の学生の就職難はここ最近の傾向で、医者になる道から薬の研究、販売などに移る学生も少なくありません。逆に医者になるよりもこちらのほうが収入が明らかに多いため、製薬会社に入ったほうがいいという学生も多いです。ちなみに医学部生の初任給は多くて1000元前後、低くなると700元ぐらいというところもあります。これでは上海ではすこし大変です。
 「中国の鍼灸」シリーズの2回目では、臨床上よく使われている鍼灸と関連のある治療法を紹介してみたいと思っています。針については以前にここ(前回)で紹介していますので、それ以外について見てみます。


  1. 温針灸

     針をツボに刺した後に、その頭に艾をのせ、艾に火をつけることによりその熱を針に伝えるというものです。(写真1)お灸による治療法と針を併用させたやり方です。
     漢方薬にも使われる艾葉は、独特の香りをもち、婦人科に関する病気の治療では欠かすことができません。特に体を温める作用があり、冷えや月経不調、月経痛、腹痛に処方されます。鍼灸でつかう艾は艾葉をもとに乾燥させて綿のようにフワフワに加工したもので、火をつけやすいと同時に適度の火力を保つという利点があり、燃えすぎることがありません。そのためお灸にはもってこいというわけです。
     一世代前の日本人なら、お灸はまだ十分身近なものだったのですが、今ではあまり見受けられません。しかしお灸は体が寒さを受けた時の痛みなどの疾病に関してはなかなかの効果があり、血や気の巡りを高めたり、免疫力を高めたりして病気を予防する効果があります。ただ欠点として、結構な煙がでるため、長時間やると燻されてしまいます。お腹が冷えて調子悪い時など、お臍の位置に薄くスライスした生姜を載せ、その上に高さ2センチほどの艾のピラミッドを作り、火をつけてお灸をする、なんていうのも非常にポピュラーな治療法です。熱くなるまで、置いておきます。
     温針灸では写真のように針の頭に艾をのせ、ジリジリと熱が針を伝って、そしてツボを刺激します。テニス肘や膝の関節に痛み、冷え性、腹痛、月経痛、胃の痛みなど寒さと関連のある寒邪と関係のある病気の治療に広く応用されています。


  2. 抜罐法

     針治療をやった後よく用いられる治療法です。(写真2)ガラスのすい玉のような罐の中の空気を熱の力を利用して抜いて減圧させた後ツボに置き、患部の皮膚を罐に吸い込ませてその部分の皮膚を鬱血させます。この治療法も非常に歴史が古く、古くは漢の時代から記録が残っています。その当時は竹で作られた罐を使っていました。現在では主に鍼灸治療をしたあとに補助的治療法として用いられることが多いですが、古代では皮膚に出来た癰瘍などの膿などを吸い取らせたり、肺結核やリュウマチなど内科の治療にも使われた記録が残っています。
     抜罐法には、さまざまな応用法があります。単にツボを位置に吸わせるだけでなく、吸わせた状態で皮膚上を移動させたり、針で出血させて、鬱血を吸わせたりすることもあります。主に腰痛、肩こり、頭痛、慢性の痛み、など局部の血の巡りを改善する働きや、感冒、消化不良、など内科の疾病にも使われます。一般に15分ほど吸わせるのが普通で、あまり長時間持続させません。今は火を使わずに、シリンダーをつかって罐の中の空気を減圧する安全な方法もあります。この抜罐法は日本でも治療として使われることも多くなってきています。 ただ、治療後に皮膚に大きな鬱血の跡が長ければ1週間ほど残るので、気になる方は注意が必要です。(写真3)


 中国の多くの病院では、まず問診を受けた後、まず針を刺し、その後針に電気や艾をつかって刺激を与えたあと、抜罐法をするというのが大きな流れになっていて、1人の治療にだいたい45分ぐらいかかります。
 一般に現地の保険治療の関係上、病院では使い捨て針を使わず、消毒して何回も使います。これは日本人には受け入れ難いので、針は薬局などで使い捨ての針を売っていますので、それを自分で購入していくと衛生面での問題が減ります。

(山之内 淳)


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