中医沙龍〜中医薬大学の教室より〜

病院でよく使われる風邪薬、「中成薬」


日本では結構人気のある中薬(漢方薬)ですが、こちら上海では今ひとつ人気がありません。なにより煎じるのが面倒なので、よっぽどの難病でない限り、煎じ薬は飲もうとしません。

そこで外来の患者には、便利で服用の簡単な錠剤などの形で既に製品化された中薬、つまり中成薬をよく処方します。また中国人の家庭には大抵抗生物質を揃えているため、あまり中薬系統の薬は服用しませんが、それでもまだ根強い人気があります。おそらくこれを読んで下さっている方のなかでも風邪をひいて地元の病院や薬局へ行った方も少なくないはず。

そこで今回はよく処方される中薬をちょっと紹介したいと思います。

上海は日に日に寒くなってきています。私自身の実感ですが、大陸の風邪はかかると直りにくく、結構面倒です。日ごろから睡眠と栄養をよく考えて生活してください。また風邪をひいたら脂っこいもの、辛いものを食べるのは極力避けます。

なお以下に紹介する薬はほとんど薬局でも手に入りますが、病院で医者と相談して使うようにお願いします。また漢方薬でも妊婦などが服用すると悪影響をもたらす場合があるのでくれぐれも注意してください。 

上海中医薬大学の付属病院にもなっている龍華病院。他に曙光病院、岳陽病院がある。手前を走っているのは救急車。

T 板蘭根冲剤

以前にこのコーナーでも紹介した板蘭根のエキスを粉末にした薬です。
カプセルタイプもあります。

主に清熱解毒作用が強いため、薬はかなり苦いです。普通お湯にといて服用します。熱があるとき、喉が痛いとき、おたふく風邪などに処方します。

免疫力を高める作用もあり、風邪の予防に飲む患者もいます。ただし胃腸の調子が悪いときは、嘔吐などを起こす場合もあります。


U 抗病毒口服液

これは複数の生薬を混ぜて作った液状の飲み薬です。

板蘭根石膏知母連翹石菖蒲鬱金生地などが入っています。
これも熱性の感冒に使いますが、主にインフルエンザなどウイルス性の感冒に処方します。

清熱燥湿、涼血解毒作用があります。


V 銀黄口服液(含片)

銀と黄はそれぞれ銀花黄今[本来の漢字はの上に草冠]をさします。

この薬には、飴のように口に含ませる「含片」や液状の「口服液」などのバリエーションがあります。喉が痛いときなど含片が便利です。これも熱性の感冒に使います。

主に清熱解毒、消炎作用があります。
喉の調子が悪いと思う時は「西瓜霜含片」というのもあります。西瓜から作られる西瓜霜を成分に含み、口の中で飴玉のように舐めます。


W 葛根今連湯(錠剤、散剤など)

かの有名な「傷寒論」の方剤を応用したものです。
中身は葛根黄今黄連甘草が入っています。

これはお腹にきた感冒、下痢などに使います。葛根は葛根湯の項で紹介しましたが、下痢時によく処方される生薬です。中医的には胃腸の陽気を鼓舞させ、熱を冷ます作用があります。

余談ですが、葛根には血管を拡張させ、血液の流れを改善させる働きがあるため、頭痛や耳鳴り、高血圧の患者などにも処方する生薬です。清熱解毒作用に加えて体の表面と内側にある邪気を飛ばす作用、下痢止めなどの作用があります。


X 蛇胆川貝枇杷膏(膏方、カプセル)

膏方というのはいわゆるシロップ状の薬で、服用時は15mlほど匙に取り、そのまま服用します。味は甘いので飲みやすいかと思います。

中には三蛇胆汁川貝半夏枇杷葉桔梗薄荷など十数種類の生薬が含まれています。
主に肺を潤す作用が強いため、痰の多いときや咳がひどい時などに使います。喘息の症状を和らげる働きもあります。


Y 牛黄解毒丸(錠剤)

牛黄雄黄石膏氷片大黄黄今桔梗甘草などが入っています。
成分的にはかなり高価な生薬が含まれています。

喉が痛いとき、歯茎が腫れているときなどに消炎作用があります。また解熱作用もあり、下剤にあたる大黄を含んでいるため、高熱が出て便秘の時などにはよく用いられます。


Z 銀翹片

清代の医学書『温病条弁』に書かれている銀翹散という有名な方剤を錠剤にしたものです。金銀花連翹牛蒡子桔梗薄荷など10数種類の生薬が配合されています。

悪寒のない発熱のある感冒、咳や喉の痛み、頭痛に処方します。薬に発汗作用もあるので、解熱作用は効果的です。中医学でいう風熱感冒には使われますが、風寒感冒には使えません。悪寒の強い人は禁物です。


[ 小青龍合剤

日本ではアレルギー性鼻炎などに処方されるため知名度はかなり高い薬です。

漢の『傷寒論』に載っている方剤で、主に悪寒のつよい風邪のひき始め、痰は白色で固まりでない状態の時、それらに加えて喘息があり、横になることができない患者にも使います。気管支炎気管支喘息アレルギー性鼻炎などに用いられるのもそのためです。

ただし体を温める麻黄細辛桂枝などの生薬を含んでいるため、どちらかというと暑がりの人、汗が日ごろから出やすい人、痰の色がすでに黄色になっている人は使えません。

解表散寒、温化寒飲の作用があります。


\ 十味龍胆花顆粒

中国の伝統医学にはいわゆる中国医学のほかにもチベットをルーツにする蔵医もあります。蔵医学にもさまざまな薬の処方があり、その中でも上海の病院でも比較的よく使われるのがこの薬です。

成分は龍胆花烈香杜鵑小檗皮などで痰が多い咳や発熱、鼻水、喉の痛み、大便が乾燥しているなどの症状の時に使います。これは熱性の感冒に使うことが多いです。

清熱化痰、止咳平喘の作用があります。


] 清開霊[月交]嚢

中医学で非常に高価な生薬を使う代表的な方剤が3つあり「三宝」と呼ばれています。その中で一つ安宮牛黄丸という方剤があります。
これも清代に書かれた『温病条弁』の中に掲載されていますが、それに若干手を加えたのがこの[月交]嚢(カプセル)です。

中には牛黄水牛角珍珠母黄今板蘭根金銀花等が含まれて居ます。そのため清熱解毒作用が強く、高熱がなかなか下がらないとき、喉が痛いとき、焦燥感があるとき、舌が赤く苔が黄色を帯びているときなどに使います。

その他慢性、急性肝炎、肺炎などにも処方することがあります。
以前この注射液もありましたが、今は使われていません。


以上、10種類ほどよく使われる中成薬を紹介しましたが、当然実際にはもっと種類があります。
もし現地の病院にいって薬を処方してもらうことがあったら、どれが西洋薬で、どれが中薬かよく質問されることをお勧めします。

その中薬は病気で処方をせず、「」で処方します。したがって同じような風邪の症状でも細かく分類され、その上で処方が組まれていきます。ですから時間的に余裕のある方は、中成薬よりも医者の経験の結晶である生薬の煎じ薬を飲まれることをお勧めします。

また中国の生薬の品質に不安を感じられる方は、「精品薬」といって、特別に加工された生薬があり、大抵の薬局ではそろっています。これらの生薬は煎じるのが惜しいぐらい非常に美しく加工されています。

山之内 淳


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