中医沙龍〜中医薬大学の教室より〜

シリーズ連載:知って得する、おなじみの中医薬 No.2

夏場の風邪に、Huo香正気散
注=Huo:くさかんむりに霍


筆者の病院でのインターン生活もかれこれ2ヶ月目、現在は癌科で患者さんたちと接しています。

私がいまいる癌科は、龍華病院でも特色のある科の一つで、アメリカからも医者が見学に来たりしています。治療法の特色とすれば、なんといっても漢方薬(中薬)と抗癌剤の併用でしょう。


(町で見かけた光景)
とくに副作用を抑える効果は、極めて有効で、その他にもさまざまな抗癌作用のある生薬を混ぜながら、総合的な治療を行っているのが特徴です。こちらの傾向として、まず近所にある腫瘤医院で外科手術など西洋医学で対処できる方法をすべて行った後、中医治療にやってくる患者がほとんどです。そのため病棟のほとんどが重症患者。しかし総合的な治療というわけで、外来患者の数は桁外れに多く、我々も刈り出されて、1日中処方の写しをを手伝うこともままあります。

T 夏ばての症状がすすんだら・・・

さて今回の本題。

この時期、空調のつけすぎや冷たいものの食べすぎで食欲がなかったりしがちです。夏ばてのことをこちらでは「中暑」といいますが、この湿気の多いじめじめとした上海のこと、どうしても体が思うようにいきません。その夏ばての症状がさらにすすんで、悪寒や発熱、下痢に嘔吐、腹痛、頭痛などの症状、加えて舌が苔で真っ白だったら主に今回ご紹介する方剤「Huo香正気散」を使います。

この方剤にも相当長い歴史があります。出展は『太平恵民和剤局方』で、この本は宋代に編集された中国ではじめての国家による薬剤の専門書で、掲載された方剤は297種、この方剤もそのうちの一つです。

Huo香正気散の中身を紹介しましょう。約13種類の生薬が巧みな組み合わせで含まれています。

まず名前にもあるHuo香、これは夏場に極めてよく使う生薬で、体を襲った風邪を散らし、その芳しい香りから体に溜まった湿を飛ばします。夏場冷たいものをとりすぎると、湿が体に容易に溜まるため、温性のこの生薬はもってこいなのです。

その他に紫蘇白Zhi(くさかんむりに止)を加えます。紫蘇といってもピンとこないかもしれません。日本ではアオジソと呼ばれていますね。これら香りの強い生薬を加えることにより、体に溜まった湿を飛ばす力をますます増加させます。

あと半夏陳皮を加えます。おなじみ陳皮はみかんの皮ですが、これら二つは嘔吐を抑え、中医学での胃腸の働きに相当する脾臓の働きを整え、若干の湿を乾かす作用もあります。

白朮茯苓には胃腸を整える働きのほか下痢止めの働きもあります。
台湾などに行った方はおなじみの檳榔、その皮である大腹皮は漢方薬としてよく使われます。
厚朴と組み合わせて、気の流れを整え、お腹の膨張感などを抑えます。
そして桔梗、これは桔梗の根っこの部分を使います。風邪の症状や肺の働きを整える作用があります。
(なつめ)、甘草生姜で全体の生薬の調和を図ります。

U 解表化湿、理気和中

いかがでしょう?全体として非常に美しい生薬のハーモニーを作り上げていますが、これらの作用を中医学の専門用語でまとめると、

解表化湿、理気和中

となります。つまり体の表面にある邪気を飛ばし、湿を取り除く。同時に気の流れを整えて、胃腸の作用を安定させる、というところでしょうか。

以上からわかるようにこの方剤は湿を乾かすところにさまざまな配慮がなされています。言い換えると湿に犯されてない人がこの種の薬を服用すると、逆に体の正気を犯してしまいます。

自分がどの程度湿に犯されているのか、判断に苦しむところですが、簡単な方法として、舌を観察します。舌の苔が表面にびっしりと、しかもぶ厚く付着している人は、多くが湿の症状が重いです。逆に苔がほとんどない人、舌の表面が乾燥している人、表面に皺がたくさんある人は陰液(水分に相当)が不足していますのでこの方剤は使用できません。

この方剤は中国では非常にポピュラーなので薬局でも簡単にカプセル状の物や、粉状のものが売られていて、市販薬として手に入れることができます。自分の症状に合わせてご使用ください。

(山之内 淳)


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