中医沙龍〜中医薬大学の教室より〜

シリーズ連載:中薬ミニ辞典 No.4

決明子 - 夏を乗り切るために -


梅雨もすっかり明けてしまい、これから10月終わりぐらいまで暑くてムシムシした夏本番です。

私たちもいよいよ最終学年に入り、附属病院でインターン生活を送っています。
今までも研修として患者とは接しては来ていますが、今度は見習い医者として入院患者を診ていかなくてはなりません。
始めは大量のカルテ書きや検査結果の整理からですが、病人の数も多く、すべてマンパワーでこなすため、夜11時、12時に帰宅することもチラホラ。加えて夜勤もこなさなくてはならず、この1年間は学生時代とは違った緊張感あふれる生活を送ることになります。

T 夏場の飲み物:「決明子」

夏になると、病棟の給湯室にはある種のお茶が患者に飲み物として常時置かれています。

おそらく日本人にもなじみがあるお茶だと思いますが、その名前は「決明子」、日本では「ハブ茶」の名前で親しまれています。

米粒ぐらいの黒い豆で、一般に茶店ではすでに炒ってあるものが並んでいます。

決明子は夏場の飲み物として、中国では日本の麦茶のような感覚で飲まれます。今回はこれにスポットを当ててみます。

最近は中国のスーパーでもペットボトル入りの決明子が売られています。味は、若干苦く感じるかもしれませんが、ほのかにこおばしい香りがします。お茶の色は紅茶のような濃い色をしています。


U 「決明子」の効能

中国では古代から『景岳全書』や『名医別録』などに記載があり、中医学の分野でも広く使われてきました。その効能をみてみましょう。

効能:1.清肝明目 2.平肝潜陽 3.潤腸通便

は経絡で目と結ばれており、目に関する疾病はよく肝臓と関係があると考えます。例えば目が赤くて腫れているのは、肝臓の経絡を火が襲ったためだとします。決明子はそれら肝臓の火を冷すだけでなく、同時に熱を持った体をも冷ます働きもあります。そのため夏になると、ほてった体を冷すためにもってこいというわけです。その他、現代では鳥目や視神経に関わる病気の治療に使われます。

肝臓の陽が盛んで、頭痛や立眩みなどが起こる患者に対して、陽を鎮める働き及び利尿作用があり、現在では菊花などと組み合わせて、高血圧の患者に使われます。

肝は人の気性と関わりがあり、そこから気性のよくない人は、肝が火を宿り体に悪影響をもたらします。一般に高血圧の人で、顔が赤っぽく、怒りやすいというのも実は肝陽上炎という背景があるのです。

そして何よりも、便秘気味の方にお勧めです。また便秘を治す働きと同時に、腸がコレステロールを吸収するのを制限する働きがあり、高脂肪血症、動脈硬化などにも効果があります。

ただ全体的に体を冷す作用が強いために、飲みすぎには気をつけてください。

日本ではなかなか手に入りにくくかなり高価な決明子ですが、上海では町じゅうの茶店で安価に手に入れることができます。
夏に日本に帰られる方はお土産に如何ですか?

(山之内 淳)


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