中医沙龍〜中医薬大学の教室より〜

シリーズ連載:五行説を語る No.1

五行説を語る - 木、火、土、金、水 -


「江南の春」とは良く言ったものです。
筆者も陽気につられて、杭州まで足を伸ばしてきました。

リピーターが多い杭州、街全体が非常に綺麗で、私もすっかりその魅力に取り付かれました。道理で高級な別荘地が、西湖の湖畔にちらほら。春は緑が美しく、生命が躍動する時。

陽気が盛んになり、五行説では「木」に属する、なんて言いますが、さて今回のテーマはその五行説です。

T 五行の五の源流

学者によれば、中医学のなかでは非常に迷信の匂いがぷんぷんすると言われ、しかし中医学の骨格をなし、古代哲学とも深く関わりのある分野、それがこれからご紹介する五行説です。
といっても古代人が考え出したもの、現代科学から見れば当然未熟であることは避けられませんが、それでも今でも臨床上で生きています。

五行の五の源流は殷、商の甲骨文字の時代までさかのぼります。
殷の時代の人々は自分のすんでいるところを中商、それを中心に四方を北土、南土、西土、東土とし、空間を五つの方位に分けました。
これが五行説の源流とされています。
そして人々の生活の営みから春秋時代、もっとも原始的な唯物論の一つで、とにもかくにもこの世界は「木、火、土、金、水」で成り立っているという思想が生まれます。

つまり水と火により人々は食べ物を、金と木で人々は耕作を、土から万物が生まれると言うわけです。そうして「木、火、土、金、水」の特徴により物事が五つに分類されていきます。

ここで「行」とは行列の意味のほかに、相互関係という意味があります。中医学の原型が形成されたこの時代、自然界が「木、火、土、金、水」からなっているというマクロ的な哲学思想を、中医学では人体に取り込みます。


U 「木、火、土、金、水」の特徴

では、どのように「木、火、土、金、水」の特徴を捉えたのか?ここでは《尚書、洪範》を参考に説明します。

・・・・「木曰曲伸」、木の枝の様子を想像してみてください。木がしなやかに曲がり、外へ伸びようとする状態、つまり物事の成長、発達、をイメージします。これらの性質に関係あるものを木に属するとします。五臓では肝がこれにあたります。

・・・・「火曰炎上」、火と言えば熱い、炎上などイメージしますが、ここから繁盛、熱、上昇などの性質を持つものを火に属するとします。五臓では体が血液を回って体を温める作用があるから、心がこれに属します。

・・・・「土爰稼穡」、つまり土地から人々は農作物を収穫します。土地は万物の母と言われるほど、古代人は土を大切にしました。ここから物事が生まれる源、物事を貯めておく倉庫のような役目をする物を土に属するとします。五臓では消化器官にあたる脾がこれにあたります。

・・・・「金曰従革」、この「革」は変革を意味します。そこから収める、清 潔、鎮める、などの性質から、五臓では肺がこれに相当します。新鮮な空気を取 り入れて、体内の濁った空気を吐き出すところからイメージできます。

・・・・「水曰潤下」、水は下に向かって流れ、潤す働きがあります。そのため寒い、涼しい、かつ下へ向かう傾向の性質のものを示し、五臓では腎臓がこれに当たります。

V 特性によって物事を分類する


この五行の考え方はいろんな分野で使われます。
実は五行そのものは現在医学ではあまり意味をなさないものの、この思考方法には中医学独特のものがあり、現在でも研究の対象になっています。

その一つに特性によって物事を分類する、などはその典型で少し例をあげて見ますと、たとえばこの中国大陸を例にとると、沿岸部は、東にあたり太陽が昇り、植物が茂り、陽気が盛んなところから木に属し、北部は、冷たい気候で、動植物の活動も制限を受けるところから水に属し、南部の熱い気象から火に属し、・・・・などなどです。

では四季ならどのように分けるか?春は木、夏は火、冬は水、秋は金、じゃ土は?となりますが、ここでは長夏という秋雨前線のころの長雨時期をこれに当てはめます。ジメジメした雨季は湿をもたらし、これが土と関係が深いとみます。うまく考えたものです。

実はこの五行説、単純に各々が独立した存在ではありません。
「木、火、土、金 水」の五つがお互いに規則的な関係を持ち合っています。そうすることによって複雑にからみあっている自然界や人体の現象、法則などを、抽象的でも簡潔に五つの特徴にまとめ、我々の思考の手助けをするわけです。そこから派生して臓腑間の疾病の伝わり方、たとえば肝臓の病気が脾臓に伝わる、というような関係を説明付けます。

詳しくは次回へ回しましょう。

(山之内 淳)


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