中医沙龍〜中医薬大学の教室より〜

西瓜(xi gua, シーグアー)のお話



 筆者はいま夏休みの長期休暇を利用して、日本におります。学年が上がるにつれて実習や研修などで夏休みの期間は年々縮小され、ついに今年は1ヶ月を割りました。久しぶりに日本に帰って、日本の夏を堪能したいところですが、上海同様に日本も今年は梅雨が極端に短く、気温も連日いたるところで記録を更新しているようです。それでもあまり湿度を感じない分、過ごしやすく思うのは、上海で鍛えられた成果とでも言うべきでしょうか。
 さて今回からしばらく夏をテーマに、古代から中国人が如何に快適に過ごすために伝統医学で工夫してきたか、いくつか例を挙げながら、ご紹介していきたいと思います。是非この夏にお試しいただいて、暑い上海の夏を乗り切りましょう。(写真は淮海中路のあるレストランの前で。)


 ◎夏といえば西瓜!
 町中に西瓜の臨時市場が開設されるほど、上海の夏と西瓜は切り離せません。今年は8424号と呼ばれる品種が人気あるようですが、個人的にも今年の西瓜は例年になく甘くてみずみずしいように思います。西瓜売りのおじさんから聞きましたが、おいしい西瓜は外側をたたくとまるで波が西瓜の中を伝わるような躍動感が感じられるそうです。さてこの西瓜、中医学でも捨てるところが無いぐらい非常に有効に利用できます。

  @赤い部分・・・中医学の中で体の熱を冷ます薬で非常にパワーの強い方剤に白虎湯というのがありますが、実は西瓜は「天生白虎湯(天然の白虎湯)」と言われるぐらい、熱を冷ます作用、つまり清熱解暑の作用があります。ここで言う「暑」とは、季節性をもった夏特有の熱性の邪気を指します。その他のどの渇きを癒し、尿を増やす止渇利尿作用もあり、体の水分(津)を増やし、中医学では、尿を通じて外に熱を排出するという考えから、非常に理想的な効能をもっています。しかし病院ではあまりこの赤い身の部分を処方しません。実は西瓜の皮にそのパワーの秘密があり病院ではこちらをつかいます。
  A西瓜皮・・・いつも破棄される運命にある西瓜の皮ですが、一番外側の緑の皮はとくに「西瓜翠衣」と呼ばれ、清熱解暑の作用があります。また一般に皮は中身より利尿作用が強いとされています。夏になるとスープ(湯)によく出てくる冬瓜(とうがん)も中身よりその皮に中医学的な有効成分が含まれており、利尿作用や、水腫をとる働きがあります。みかんの一種の皮である「陳皮」も消化器の働きを整える重要な薬ですが、皮はなるべく捨てずに食べてしまいたいところです。使用方法は西瓜の皮を乾燥させた後、煎じて服用します。
  B西瓜霜(xiguashuang)・・・清の時代の《瘍医大全》に掲載されており、現在でも中国の薬局で製品が手に入ります。これも西瓜の皮を利用して作ります。私達も大学の実験の授業で作りましたが、西瓜を半分に切って中身を(赤い部)を穿り出します。内側の赤い色がだいたい無くなって、白い部分がでてくるぐらいまで掘り下げ、その上に芒硝という生薬をまんべんなく内側に塗ります。これは硫酸ナトリウムの結晶水つきの化学物質で、中医学では便秘のときに処方されます。量は3kgの西瓜の皮に対して500gが基準です。そのあとこの西瓜をネットに入れて風通しのよい場所にぶら下げておきます。10日ほどすると西瓜の皮の外側に白い霜のようなものが出てきます。これを集めたものが西瓜霜です。ただし夏場はかなり暑く西瓜が腐る恐れがあるので、秋口が望ましいです。気温は20℃から25℃ぐらいが理想。この西瓜霜は、清熱消腫の作用があり口内炎や喉の痛みや腫れに効果があります。使い方は粉末を患部に直接ふりかけるといいです。私自身もよく使います。

 余談ですが、筆者は西瓜を買って帰り、ミキサーに氷と牛乳と西瓜の赤い部分をいれて、ジュースをよくつくります。西瓜が破格の値段で手に入る上海ですので出来る飲み物です。砂糖を入れなくても、西瓜の天然の甘みがおいしくてしかも気軽に作れるので私は夏場によく作ります。是非おためしあれ。ただし糖度が高く太りやすいので注意。

(山之内 淳)


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