
この労働節休みには黄山(記事はこちら)のほかにも学校の格安ツアーで寧波にも行ってきました。写真はそのときに行った天童寺付近の様子です。いま上海から寧波までは見事高速道路が走っています。道路は立派な4車線で、サービスエリアも完備されており、車窓を見ている限りでは、日本の高速道路とそっくりです。サービスエリアではその地方の特産物の販売や、ガソリンスタンド、レストランなどが完備されており、多くの人でにぎわっていました。ただ学校のバスを利用したのですが、途中でバスが故障し、しばらくレッカーしてもらう騒ぎに。そういえば路肩でボンネットを開けている車はすくなくありません。応急処理はしたものの、どうもエンジンの調子が悪く、高速道路のど真ん中で止まるのではないかとヒヤヒヤしながらの旅行でした。
前回は、陰と陽の起源について簡単にご紹介しました。今回は、この陰と陽の考えを用いることによって、どのように物事の関係を説明するのか、陰と陽の考えの基本的な内容を説明します。この考え方は中医学だけでなく、広くさまざまな分野で応用されるため、中医学の中でも極めて現代科学に適用されやすい考えであると言う学者もいます。あとで説明する5行説よりもはるかに理解しやすいものです。
一般的に、陰陽相互交感、対立制約、互根互用、消長平衡、相互転化の5つの関係に分類されます。これからその概要をみていきます。一見かなり医学とは関係なさそうに見えますが、実は中医薬(漢方薬)の配合は、この陰と陽の微妙なバランスを調整するために処方されており、そのときに陰と陽の相互関係が非常に大切になってくるわけです。
- 陰陽の対立と互根
これは非常に分かり易いと思います。陰と陽の定義に従って、分類していったときに生じる対立的な関係を指します。具体的には、上と下、左と右、人と水などです。では互根とは何でしょうか?これは簡単に言うと、陰と陽はその成り立ちの根本においてお互いに依存関係にあり、どちらか一方がなくなればその存在自体が意義がなくなる、というものです。たとえば上を陽、下を陰とすれば、もし「下」がなければ「上」はその意義を失うわけであり、つまり陰があってこそはじめて陽が定義されるわけなのです。ですからたとえば危篤状態の重病患者を陰と陽で弁証するとき、「亡陽」もしくは「亡陰」というような表現をします。つまり陰と陽がその関係を失ってしまい、陽が身体から消えてしまうような症状をさします。身体が冷たくなったり、意識がもうろうとしてきたり、顔色が青白くなるのはすべてこの範疇です。このあたりは次回、詳しく説明しますが、陰と陽がその対立関係をなくしてしまったとき、たいていは重大な結果をもたらすのです。
- 陰陽の交感
互根では、陰陽の相対的関係を重点としていましたが、交感では一歩踏み込んで、これら陰と陽の関係がお互い影響し合うことを示します。古代思想家は「(陰陽)二気交感、化生万物。」と言いました。おなじみ《黄帝内経》にも「在天為気、在地為形、形気相感而化生万物。」とあります。天の陽気が下に降りて、地の陰気が上に昇る、そして陰と陽の二つの気が交じり合って、雲や雷、雨が生じることは、前回の気の項でもご説明しました。しかしこれには大きな前提があります。それは陰と陽の運動によって初めて交感が生じるというものです。そしてお互いに均衡状態に保たれていることを、中国の古代哲学では「和」といいます。ですから永遠に運動している陰と陽が交感するためには、この「和」という状態が必要条件になります。そうして自然、人類、ひいては万物がうまれると考えたのでした。
- 陰と陽の制約関係
陰と陽はお互いに反対の性質を持つものですから、同時に制約しあいます。たとえば熱いものを冷やすときに、氷など冷たいものを利用します。水でもって火を消すことができます。このようにお互いがお互いを制約する関係があってこそ、陰と陽の動態的均衡関係がともたれます。《類経附翼・医易》に
「動極者鎮之以静、陰抗者勝之以動。」とあります。つまり身体の機能が興奮状態にあるときは陽がさかんであり、これを鎮めなくてはなりません。そこで中薬では質量の重い薬、たとえば化石、鉱石類を処方して鎮めるわけです。それを更に具体的に表した関係が以下の陰陽消長平衡という関係です。
- 陰陽消長平衡
消、とは減少を示し、長は増加をしめします。つまり陰と陽の関係は一定の割合を持ったものではなく、制約、互根の関係などにより変化しつづけるものであることを示します。たとえば陽が強くなりすぎると、制約の関係により陰が押されてしまい、陰が減少します。たとえば互根互用の関係より、陰が増えればそれにともなって陽も増えます。有名な薬で、「腎気丸」というのがあります。これは腎の陽を補う薬で、寒がりな人、腰痛の人から、ひいてはインポテンツの人まで広く処方される薬ですが、この中の成分のほとんどは陰を補う生薬なのです。しかしそこにほんのすこし桂枝、附子(トリカブトの一種。)など身体を温める陽系の薬が加わっています。全体の効能は陽を補うのに、それとは反対の陰を補う薬が大量に処方されているところからも、陰と陽両方を考慮して互根互用の性質を利用した古代中国医学の処方のポイントが垣間見れます。
- 陰陽の相互転化
陰と陽がある一定の条件下において、陰が陽に、陽が陰に変化することができます。陰と陽の消長変化がある一定の程度を超えたときに、この変化が現れます。よく「物極必反」といいます。つまり物事が発展する極致まで達したときに、それとは反対の変化があらわれるというわけです。たとえば、夏炎天下で長時間運動していたときに、熱射病、日射病などにかかりますが、中医ではこれらの症状を「中暑」という証でまとめます。このとき危険な状態になると、体温が逆に下がってくるなど突然の変化が現れてきます。
そのほかにも徐々に陰と陽が変化するのもこの範疇に入れられます。たとえば四季のめぐり変わり、昼と夜の変化などもすべて相互転化に入ります。
これら基本的な陰と陽の関係は、中医学の診断とその後の病気の変化をよむ上で欠かすことの出来ない考え方なのです。では次回は具体的に陰と陽と病気の関係について説明していきます。中医学がその人の体質をいかに大切にするのか、すこしでも理解していただければ幸いです。
■参考図書
- 中医基礎理論
- 中医診断学
- 方剤学(以上、上海科学技術出版社)
- 新編中医基礎理論(北京医科大学中国共和医科大学聯合出版社)
(山之内 淳)
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