中医沙龍〜中医薬大学の教室より〜

陰と陽〜究極の分類法 その1


 先日は大学の体育館で第十回伝統保健体育運動会が開催されました。これは日頃、授業やクラブなどで練習している中国古来から伝わっているさまざまな健康法、たとえば気功や、功法などを学生達が披露し、その出来を競うものです。よく公園などで上海のお年寄りがやっているのが中心ですが、筆者も少林功で参加してきました。動作は全部で10分ほどで非常に簡単ですが、結構な運動量で冬場でもたっぷりと汗をかきます。お蔭様で、個人と団体で1位(景品に洗剤とタオル、賞金10元、そして賞状)をもらいました。留学生活の思い出がまた一つできました。(写真はその様子)

 これから3回に分けて陰と陽についてご紹介します。今回1回目は陰と陽の考え方の起源、2回目は陰と陽の考え方の内容、3回目は陰と陽の考え方の医学的応用についてです。

   気と並んで中医学のあらゆる分野で顔を出す言葉に”陰”と”陽”があります。これもまた気と同様に非常に抽象的でわかりにくいのですが、人の身体を弁証するときに非常に大きな役割を果たします。《霊枢・陰陽系日月》に”陰陽者、有名而無形”とあるように陰と陽は物質として地球上に存在するものではなく、物事の属性を決める抽象的な哲学的考えであることがわかります。非常に複雑な自然科学、医学などの客観的な科学の分野において、物事を分析する一つの方法として古代中国人が考え出したこの方法は、現代科学にも通じるものを持っているように思います。では古代中国人はどのように考えたのでしょうか?

 この陰と陽の考え方(陰陽学説)の歴史は非常の古く、戦国時代、秦漢にはその理論を確立させています。その起源は吉凶を占う古代中国の書物《易経》の八卦と六十卦にあるようで、そこに陰を”−”と表記し、”−−”を陽と表記しています。その中にあるおなじみの太極八卦図はみなさんご存知だと思います(右図)。白い部分は陽、黒い部分は陰を表し、お互い動態的に変化する様子をうまく表しています。つまりこの地球上においてお互いに対立したり、統一されたりする2つの性質のまったく正反対のもの(つまり陰、陽)によって変化する規則性をもつということを示しています。たとえば男と女、寒と暖、明と暗などがそれです。そのなかでもポイントになるのは、”太陽に向かう”と”太陽に背く”という関係です。日向と影を想像してもらうとわかりやすいと思います。これがこの陰と陽の性質を最も簡潔に表しており、ここから色々なモノを対立的に分類していきます。つまり運動したり、外に向かったり、温めたり、形が無かったり、明るくて、活発なものを陽とし、静止していたり、内に向かったり、冷たかったり、形があり、暗いものを陰とし、天と地を分けるなら天が陽であり、地が陰になります。南北なら、日向になる南が陽になり、北が陰になります。太陽が昇る東が陽であり、西が陰になります。しかしこれはすごく相対的で、ちょうど永久磁石を2つに割っても2つの破片がともにN・S極をもつように、陰と陽のなかにも又、陰と陽が存在します。たとえば昼を陽とし夜を陰とするなら、昼は午前を午後に分けることができ、午前は陽、午後は陰になります。しかし厳密に言えば物事を勝手に陰と陽に分けてもいいというわけではありません。それは性質に則った分類でなければならず、寒が陽に、熱が陰に属してはならないのです。

 中国伝統医学は西洋医学と違って解剖学方面に少なくとも劇的な発達がありませんでした。西洋医学がひたすらミクロの世界、つまりより細かく人体を切り刻むという方法で医学を発達させた一方で、古代中国人は限られた科学と器具の発達のなかで、陰と陽というものの性質をあらわす抽象的な方法によって、この複雑な人体を分類していったのは、東洋と西洋の思想の違いを見るようで、非常に興味深いと思います。
 では、次回は陰と陽に分けることによってそれらはどのように影響し合い、どういう変化をもたらすのかということで、陰と陽の考え方の内容についてご紹介します。

■参考図書

  • 新編中医基礎理論(北京医科大学中国協和医科大学聯合出版社)
  • 中医基礎理論(上海科学技術出版社)
  • 中医気功学(人民衛生出版社)

(山之内 淳)


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