最低気温が氷点下5度と言う上海ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
懸案の試験が先週でもってやっと終了し、マカオ返還の休みを挟んで今新しい学期が始まっています。今回は週に3回ほど功法の練習があり、まだ太陽が昇りきらない冬の凍てつく空気の中、大学へ自転車を走らせています。このテスト期間中にかぎらず、学生たちの日ごろの生活が大変なのか、付属病院に実習に行くと必ずうちの大学の学生、数人は入院病棟で寝ています。テスト中は私も含めてみんな目にクマをつく
り、青白い顔をして教室に出てきますが、体にはくれぐれも注意したいところです。
さて今回は中医学における神についてご紹介しようと思います。きわめて抽象的な響きですが、実際はなかなかよく出来てる理論だと思います。ではまず診断学(臨床)ではどのように使われるか?から説明していきます。
中医学で患者を観察するときに、必ずやらなくてはいけない4つの項目があります。すなわち中医学ではすっかりおなじみの四診「望 聞 問 切」です。簡単に言うと、望は患者を目で持って観察することであり(舌を見ることも含まれます)、聞は、患者の発する声、音を聞いたり、臭いをかいだりする行為をさし、問は問診、切はおなじみ脈をとることを指します。この4つを総合的に結合させることにより初めて中医学的診断がくだせるのであり、どこかのテレビでやっているような脈だけをみて病気を当てると言うようなことは中国の常識では考えられません。それでは神にかかわる内容はどこにあたるのか?それは望診に含まれます。
患者の神を見るとはどう言うことなのか?これは中国医学の根本思想の一つである「整体概念」とも深くかかわりあっています。「整体概念」とはつまり体全体の臓腑器官、生理、心理面に加えて、その人間の置かれている外の環境との関係の統一、整合をさします。気功などが中医学において重要な意味を持つことも、人体と環境との係わり合いと言う点からもお分かりになるかと思います。つまり、ここにおける神とは人間の正常な生命活動を保つにあたって必要な生理、心理的な体のはたらきや思考、言語、体の動き呼吸までもを含めて指し、そこで中国古代の人々が体の枠組みである形体との「形神合一」を唱えるのも納得できます。これらの内容は中国医学の4大経典の一つである《黄帝内経》に詳しい記載があります。
ではこの神とはどのようにして生まれるのでしょうか?これも《…内経》の記載によると、先天の精から生まれ、そのあと後天の水穀精微の滋養により育まれる、とあります。つまり母親のお腹の中にいるときにその基礎はでき、そこから先は食べ物や生活環境のなかで育まれるというわけです。それら神のはたらきを充実させる要素として、精、気があり、神とあわせて古代中医学では人間の養生の3つの大きな要ということで「人生之三宝」と呼んでいます。精、気については後ほどご紹介します。
中医学全体は決してもやもやとしたものではなく、少なくとも診断に関して言えば、きわめて科学で明快なプロセスを踏んでいます。残念ながらそれを実行できる医者が少ないのが現状で、西洋医学とまったく違った観点で思考する能力が求められるのです。神についてもそうで、宗教におけるそれとは明らかに違うことをご理解いただけたでしょうか。ちなみに《内経》は成立年代は不明ですが、可能性として教科書の上では東漢の前後に書かれたとなっています。改めて中国の歴史の奥深さには驚きます。
(参考文献)
普通高等学校教育中医薬類教材
中医基礎理論、中医診断学、内経選読(上海科学技術出版社)
新編中医基礎理論(北医大、協和医大聯合出版社)
中医学導論(上海中医薬大学)
(山之内 淳)
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